序文
人は長い時間、知識や制度によって世界を理解しようとしてきました。
それによって多くのことが可能になりました。しかし同時に、人は少しずつ身体から離れ、自然から離れ、暮らしから離れてきました。
そして今、人はもう一度「生きるとは何か」という問いに出会っています。
人は知識だけで生きているのではありません。
人は感じ、動き、関係の中で生きています。
その感覚を取り戻すためには、説明や教育だけでは足りません。
人は暮らしの中でしか変わらないし、育たないからです。
他力サムガ牧場は、そのための場所として生まれました。
ここでは人が人を教えるのではなく、馬が師となります。
馬は教えません。
説明もしません。
評価もしません。
ただ関係の中で生きています。
人はその関係の中で、身体を通して世界と出会い直します。
この牧場は学校ではありません。
研修施設でもありません。
ここは巡礼の場です。
しかし巡礼の目的地ではありません。
人はここに立ち寄り、
馬と暮らし、
身体を動かし、
関係の中に身を置き、
またそれぞれの道へ巡っていきます。
牧場は、自然と命をつなぐ境界にあります。
他力サムガ牧場は組織でも制度でもありません。
それは風土がつながる生態系です。
人は風として訪れ、
土と出会い、
種が芽吹き、
また巡っていきます。
その巡りの中で
風が巡り、
土が整い、
種が芽吹く。
その循環が
他力サムガです。
この憲章は
その巡りの中で生まれた原理です。
それは固定された教えではなく、
巡礼の道の中で生き続ける原理です。
憲章
一 ただ在る場
この牧場は教える場ではありません。
評価する場でもありません。
ここはただ在る場です。
人はここで変えられるのではなく、
風土の中で自然に変わっていきます。
二 馬を師とする
この場の師匠は人ではなく馬です。
馬は
教えません。
説明もしません。
評価もしません。
ただ関係の中で生きています。
三 共鳴
この場で起きるのは共鳴です。
誰かが誰かを変えるのではありません。
関係の中で
感覚と身体が響き合うとき、
共鳴が生まれます。
四 身体知
人は知識だけで生きているのではありません。
人は
感じ、
動き、
関係の中で生きています。
そのとき生まれる知を
身体知と呼びます。
五 風・土・種
この牧場の在り方は
風・土・種という三つの状態で表されます。
風は巡り、
土は整え、
その風土の中で
種が芽吹きます。
六 巡礼
この牧場は巡礼の場です。
しかし
巡礼の目的地ではありません。
ここは
道の途中の牧場です。
七 境界
この場には静かな境界があります。
ここは
人を評価する場ではありません。
人を競わせる場でもありません。
人を支配する場でもありません。
八 道
この牧場は
道の途中にあります。
この道は
名前を持ちません。
人が巡ることで
自然に生まれていく道です。
九 暴力と分断
暴力は分断を生みます。
しかし
風土の中で
関係は静かに回復していきます。
十 巡り
人は
風として訪れ、
土と出会い、
種が芽吹き、
また巡っていきます。
十一 中心を持たない
この牧場は中心を持ちません。
風土が場を生み、
生態系のように
関係の中で成り立ちます。
結び
この憲章は、
巡礼の道の中で生き続ける原理です。